可愛らしい新しいスタッフ
アパレルショップで働いていた頃の事です。
スラッとした可愛らしい女の子が、新しいスタッフとして入社してきました。
話し方も柔らかく、優しい雰囲気のある子で「仲良くなれそうだな!」ととても嬉しくなりました。
それから暫くして、新人さんにお仕事を教えている最中、汗臭い臭いが何処からかしてきました。
「あれ?私、もしかして汗臭いかな?」と、自分の汗が臭っているのかと思いました。
その後、休憩中にデオドラントスプレーをして特に気にはしていませんでした。
新人さんはワキガ
しかし、それから暫くした頃。
関西から来た男性の店長が「なぁ、なんか新人さん臭わへん?もしかしたら、新人さんワキガかも知れへんな。」と私に聞いてきたのです。
私は驚いて、「そうですか?よく解らなかったです。」と答えたのですが、お客様に不快感を与えてはいないか心配な店長は、他のスタッフにも新人さんがワキガではないか?と聞いて回っていました。
最初の頃は、私も新人さんの体臭をあまり気にした事は無かったのですが、日を増すごとに彼女のワキガの臭いが気になる様になっていきました。
新人さんのワキガの臭いはかなり強く、新人さんが居た場所に匂いが留まり残っているほどでした。
また、新人さんが棚の上の服を取ろうと、両腕を上げた瞬間!強烈なワキの臭いで、思わず「うっ!!」と息を止め、顔を背けてしまいました。(ごめんね。)
4週間程働いた頃には、新人さんのワキガはスタッフ全員が周知していました。
新人さんに、はっきり言えない
そんなある日、店長からとんでもないお願いを私はされてしまいました。
「申し訳ないんやけど、新人さんに、脇臭うって言ってくれへんかな?」
えー!!もう何故私にそんな事を頼むの?!と思いましたが、「男の俺から言われるのは、キツイと思うから。」
でも、体臭臭いますよ?なんて、男からでも女からでも嫌なはずじゃん!と言いかけましたが、店長は「頼む!」と言って聞いてくれませんでした。(トホホ)
それから、私は新人さんと休憩に入る度に「暑いね~!私汗臭くない?!」と言ってみたり、「私、デオドラントスプレーこれを使ってるんだけど、良いの知らない?」と話しかけてみたり、遠回しに臭いについて伝えてはみたのですが彼女に私の思いは届かずでした。
よく、「ワキガの人って自分がワキガであるとは気が付いていない。」と言われていますが、本当にそうかも知れませんね。
暫くして、店長から「どうだ?言えたか?」と聞かれましたがそこは正直に「言えませんでした。」と答えるしかありませんでした。
だって、そんな新人さんが傷付く様なことを言えるわけがありませんよね。
お客様に、不快な思いをさせているかもしれない事は重々承知していましたが、「あなた臭ってるよ、ワキガかも知れないよ。」なんて私には言えませんでした。
店長の最終手段
それから店長は最終手段に出た様で、新人さんのシフトをだんだんと減らし、最終的には一ヶ月の勤務日数は3日になっていました。
新人さんは店長に「どうしてですか?!」と聞いていましたが、「君はこれしか入れられへんのや。」の一言で、彼女は悔しくて泣いてしまいました。
なんの理由も言われずに、そんな理不尽な対応をされたら誰だって辛いと思いますが、みんな泣いている彼女を励ます事も出来ませんでした。
とても可愛いくて、一生懸命な子でしたがワキガと言う体質のせいでこんな状況になってしまってとても可哀想でした。
とても勿体無く思いました。
その後、新人さんはすぐに店を辞めてしまいましたが、私が休日に出かけた先のお店で楽しそうに働いている姿を見かけて少しホッとしました。
体臭が強い人も辛いですが、臭っていると伝えろと言われた私も大変でした。
今でも言ってあげれば良かったのか、伝えなくて良かったのかわかりません。