走っている乗用車

会社内で異臭を放つデスク

私がIT関連の会社で働いていた時のお話です。
当時私は30代で総務部所属、各部のとりまとめ的な役割をしていました。
医療系のお客様相手の会社でしたので、皆、清潔感をモットーに身だしなみには注意をしていました。

総勢15名の営業部、その中でどうしても異臭を放つデスクがあったのです。
そのデスクの持ち主はTさん。
幹部クラスのその方は人望も厚く、私たち女子社員の良き相談相手であり、父親のような方でした。

 

 

とにかく体臭がクサい、人望も厚い幹部クラスの方

いわゆる腋のそれでもなく、加齢によるオヤジ臭とも違うその臭いを例えるなら、「こぼれた牛乳を拭いた雑巾の臭い」とでも言いましょうか、とにかく体臭がクサいのです。
アイロンがきちんとなされたYシャツ、プレスの利いたスラックス、パッと見にTさんのどこからその異臭が出てくるのやら分かりません。

車に同乗

ある日、業務の都合で私も営業部に同行することとなり、運悪く!?Tさんの車に同乗と相成りました。
夏の太陽が照りつける、そんな日に窓を開けるなどということはできもせず、全開の風量と共に容赦なく車内に充満する異臭。
一般的な汗のニオイならば、エアコンの冷気で多少なりともごまかせるように思いますが、Tさんのそれは遥かに想像を超えたものでした。
まさに刺激的。
それから現地までの小一時間、何を話したのか、ルートさえも記憶がないほどの試練でした。
無事に仕事を済ませたのはいいとして、復路も同じく試練の連続であったことは言うまでもありません。

社員旅行

またこんなこともありました。
一泊二日の社員旅行、オシャレな出で立ちでTさん登場。
さすがに今回は大丈夫だろう、そんなあわい期待を見事に裏切って背後から感じるあの芳香。
「マジ、なんで?」三十路のお局が発してはならない言葉が私の中で小爆発しました。
温泉に何度も入って着替えもして、宴会ではお約束の浴衣姿なのに、なぜ臭いは着替えられなかったのかみんなにとっては楽しい旅行も、私には更に謎を深める旅となりました。

私が娘であったなら解決してあげたい

日々緊張感で一杯の営業マン。
きっと冷や汗を掻かれる事も多かったのでしょう。
でもねTさんいやT部長、そのお体から発せられる臭いは絶対にダメです。
こんなにデオドラントが叫ばれる日本にあって、それはいけなすぎます。
私が娘であったなら、是非とも解決してあげたい。

そんな気持ちにさえさせる臭いは一体どこから?自問自答の日々は続きました。
博学でちょっとギャンブラー、それでも相手を魅了してやまない笑顔がすてきなお父さん。
社内にはそんなTさん信者の女性もいて、中には「密室の会議中にTさんのお隣で深呼吸できます」なんて強者までいたり、これもまた私にとっては凄すぎる思い出エピソードです。
そんな強者はさておき、社内の誰しもが気付いているのになぜ放置されているのか。

 

 

臭いの問題はデリケート

臭いの問題って確かに深刻でデリケート。
場合が場合なら、外科的処置を要する問題にまで発展しかねないお話しですよね。
Tさんの立場上、触れてはならないタブーとして現在にまで至っているのかもしれません。
しかし、ほかに類をみない独特の雑巾臭、いや「こぼれた牛乳をふいた雑巾の臭い」のような体臭。
老若男女を問わず、いまだかつて他で嗅いだことがありません。
ある意味これは貴重な臭い成分なのでは?などと勘違いすら覚えそうです。

あれから時が流れ私は退社することとなりましたが、部長は今もまだ、あの独特の香りを纏い女性社員の癒しとなられているのでしょうか。

夏が来れば思い出す・・歌の歌詞ではないけれど、入社してから一度も揺るぐことのなかった臭い、あの体臭の正体を私は結局分からずにいます。
永遠のミステリーと化した臭いにまつわる体験、いつかどこかで誰かが私に正解をもたらして下さることを願います。